2012-01-01から1年間の記事一覧

消耗品の死ぬ権利

『エクスペンダブルズ2』(サイモン・ウェスト) 『終の信託』(周防正行) すっかり映画を見られなくなって、テロップがどうとか、見る人への配慮がとかそんなやりとりばかりを仕事でしていると、『エクスペンダブルズ2』の冒頭、人がガンガン血を噴き出し…

カリフォルニア・ドールズ/白夜

『カリフォルニア・ドールズ』(ロバート・アルドリッチ)、『白夜』(ブレッソン)。 仕事先を変わってまったく映画が見られず、先月後半から今月ここまでにかけて、この2本しか見ていない。 もう言わずもがなのニュープリント2本。フィルム上映が難しく…

Playback

少し前、三宅唱監督の『Playback』をこっそり試写にもぐらせていただいて、見た。 風格あるなあ、と思う。まだ28歳の監督が、どうしてこんなに堂々とした、それでいて繊細きわまりない映画を撮っているんだろうか。前作『やくたたず』も役者の佇まいが素晴ら…

ライク・サムワン・イン・ラブ

ライク・サムワン・イン・ラブ(アッバス・キアロスタミ)。 妖術としか思えない。キアさん、日本語なんてまったくわかんないだろうに、なんでこんな微妙な距離感の映画が撮れるのか。 ただ、日本語なんて〜、と書いたけれど、実は言葉よりもキャラクターを…

生き返らせること

ちょっと前に某映画監督が『ドミノ』や『デジャヴ』でトニー・スコットがしようとしていたのは「死者を生き返らせること」だと呟いていた。こちらも同じくらいの時期にやっぱりその二作を見ていて、作品に、そして作品を受けたその言葉に、じんとくるものが…

トニスコ

あんな『アンストッパブル』を撮った人がそんなことになるなんて、なんでや。 わからない。ニュースを見た途端に凍りつき、悲しいやら追悼やらの気分にはなれずに、ただ麻痺したように空洞がある。橋から「迷いなく飛んだ」と報道されている。その「迷いなく…

ビーチボーイズ

基本的には座って、時折手を振り踊りながら、すこし不安定な声で歌うブライアン。陽気に煽るマイク・ラブ。映像で映し出されるデニスとカール。そんなすべてを包み込んで、強靱なポップスが現れ、きらめきながら夏の夜空に消えてゆく。夢のように、それらは…

カール・マイ

アテネ・フランセのハンス・ユルゲン・ジーバーベルク特集にて、『カール・マイ』。 ベストセラー冒険小説家であるホラ吹きのおっちゃんが、「あんた昔はエロ小説書いてたやろ」とか「オマエ博士号持ってるいうけど偽装やん」とか「世界中冒険旅行した言うて…

プロメテウス

公開日は8.24のはずなんですが、いつから映画の公開日ってこんなになし崩しになったんですか?というわけで14日は千円のTOHO系にて『プロメテウス』(リドリー・スコット)。3Dメガネ持参で1300円。 もう単純な意味でめちゃくちゃ面白かったんですけど、言っ…

same place / same sin

「same placeをoccupyすることはできぬ」と漱石は書きつけた。この空間にいる「わたし」は「この空間」を誰かと分けあうことはできない。わたしの身体が占めているスペースに、他人の身体が入ることはできない。私たちは、生まれた瞬間から、常に「ほか」を…

砂漠

ときどき、無性にロッセンの映画が見たくなる。それは『リリス』であったり『コルドラへの道』であったりするのだが、『リリス』の病みきったファンタジーと同じく、『コルドラへの道』の複雑な鬱屈は胸を打つ。「勲章を貰う予定の兵士たちをコルドラまで、…

月。

ヘルタースケルター

『ヘルタースケルター』(蜷川実花)。 「最初に一言、笑いと叫びはよく似ている」……冒頭のこの言葉を完璧にやりおおせた沢尻エリカに拍手。イメージになった女、りりこは「内面」を持てない。そんなものがあったとしても、それもよくあるイメージ、クリシェ…

燃える夏

暑い。暑い。暑いので省エネ運転します。 花つみ日記(石田民三) 神保町シアターにて。歌は4度歌われる。群舞として、合唱として、並行モンタージュで、そして救いとして。冒頭の群舞はファシズム下の軍隊を軽やかに跳ね飛ばすものとしてあったのかもしれな…

クレイジー・ホース & ハスラー

『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』(フレデリック・ワイズマン)。 いつもながらのワイズマンっちゃワイズマンだけど、ちょっといつもより弱いなと思ってしまったのは、きらびやかな色彩のデジタル映像の、のっぺりした感じにいまいち乗りきれなかっ…

ロンゲスト・ヤード

『ロンゲスト・ヤード』(ロバート・アルドリッチ、1974年)@日比谷みゆき座。 アルドリッチをフィルムで!劇場で!というこの機会を逃す手はありません。駆けつけてください、行ける方。 べつに傑作!だ何だと言いつのるつもりは毛頭なく、ただぐだぐだし…

ダーク・シャドウ

ちょっと以前に見た『ダーク・シャドウ』。言わずと知れたティム・バートン監督作。 これだけのものを作られてしまうと特に言うこともない。海を滑っていく導入から、完璧さに震える。メロドラマとコメディーとホラーとアクションに加えて70年代ポップ、とあ…

ロボット

渋谷TOEIにて噂の『ロボット・完全版』(タミル語ヴァージョン)。 スーパースターが博士役と博士の作ったロボットの二役で出てきて、元ミス・ユニヴァースの綺麗なおねーちゃんが出てきて、どこまでもお馬鹿な二人組の弟子がいて、悪い博士がいて悪いロボッ…

ラジウム・ガールズ 2011

Phew+小林エリカ=Project UNDARKによる、『Radium Girls 2011』。 トラックはディーター・メビウス。 「ラジウム・ガールズとは1917年頃ニュージャージー州オレンジの米国ラジウム工場で時計の文字盤を暗闇に光る発光ペイントしたために被曝した女性工場労…

白昼の女狩り

曽根中生の未公開=オクラ作品、『白昼の女狩り』をユーロスペース「生きつづけるロマンポルノ」特集にて。 ロマンもポルノもなく、遊戯的な風土のなかで、あるのはただからっからに乾いた暴力と虚ろな目。とにかくエグい作品で、とてもこれを傑作とは呼びた…

東京に現れた!曽根中生

本日はあの曽根中生監督が東京でトークショー、とのことで、「生きつづけるロマンポルノ」特集にて『(秘)女郎市場』『天使のはらわた 赤い教室』に山根貞男氏とのトーク。 どちらも以前に見たことのある二作品だったが、『(秘)女郎市場』には笑い転げて…

緑地

東京タワーとスカイツリーのならび。 ウグイスの声。

桜、給水所

SHAME

『SHAME-シェイム-』(スティーブ・マックイーン)。 (映画が映画だけに、18禁の内容を含みます。ネタバレも含みます。不快な方はそっとタブを閉じてください。) ほのめかされるだけだけれど痛ましい話が底にあるということはやがてわかるし、主人公の顔は…

the place named

渋谷ユーロスペースにて開催中の「桃まつり」の一篇、『the place named』(小森はるか)。 蓮実重彦氏のコメントを読むまでもなく、小森さんが「撮れる人」だというのは知っている。映画美学校に在籍中から、とりわけ空間と光線の捉えかたについては、飛び…

暴力には必ず理由がある

という考え方が嫌いだ。理由があるからといってそれが必ず発現するとは限らない。親に暴力を受けて育った人が、その子にまた暴力を振るってしまう確率は、そうでない環境で育った人より統計的には高いのかもしれない。しかし、必ずそうなるとは限らない。こ…

ヒミズ

とにかくテンションを上げて殴ったり叫んだり転げ回ったり泣いたりすればよい。面白そうな台詞を面白く言えばよい。それで映画になると思っている時点で「お前2回くらい死んでこい」だ。それって幼稚園の学芸会で「おしばい」が誉められる基準だろう。はい…

おとなのけんか/Pina

ダンスト様を大スクリーンで見ようとシネコンに『メランコリア』を見にいったものの、あっさり手持ち酔いで途中退出したりしている最近です。スクリーンの小さい映画館で再チャレンジしようかとひそかに考え中。子どもの頃、遊園地のコーヒーカップから降り…

杉並有象無象デモ

久しぶりにデモに行ってきた。 参加者の数はピーク時に比べればだいぶ少ないし、シュプレヒコールも減っているし、警官の数も減った。殺気が少なくなった。 そのぶん、のんびりと歩く。それはそれで自然なこと、と思える。 気持ちのよい冬晴れの中、反原発の…