SHAME



『SHAME-シェイム-』(スティーブ・マックイーン)。
(映画が映画だけに、18禁の内容を含みます。ネタバレも含みます。不快な方はそっとタブを閉じてください。)


ほのめかされるだけだけれど痛ましい話が底にあるということはやがてわかるし、主人公の顔はずっと苦悩に歪んでいる。色調も沈痛なトーンだし、バックでかかるのはグールドのバッハ……なのだが、主人公がアホすぎて困った映画。春うららかな日にカップルで見ていたお客さんも、終映後はかなり話づらそうでした。ちなみに主人公のマイケル・ファスベンダー、横顔はヴィゴ・モーテンセンみたいだが、苦悩しすぎてクマができるとクリスチャン・ヴェイルみたいな顔になる。


コールガールを呼んでセックス、シャワーでオナニー、会社のトイレでオナニー……冒頭からしてこんな感じでぐいぐい飛ばす主人公。家に帰ればエロ動画にエロチャット、会社でもエロ動画の落としすぎでウィルス感染。「いや、まっとうな男女交際をせねばいかん!」と一念発起して会社の同僚を眺望の素晴らしいホテルに連れ込んでみれば、息子は発起できなかったようで。ベッドの横にあるバスタブのへりに座り込み、頭を抱えて苦悩する主人公。苦悩したまま同僚を帰らせ、なおもひとり苦悩しつづける主人公。と、カットが変わって、同じ部屋にコールガールを連れ込んで、窓辺に手をつかせて立ちバックで突きまくる主人公……。1カットを挟んで、美しい夕陽をバックに、コールガールが帰った後の部屋で、またもひとりで苦悩する主人公のシルエット……。いや、アホすぎるやろ。悩める主人公の血迷いっぷりはこの後さらに加速していくのだけれど、このへんでやめときます。


このシーンの立ちバックをわざわざ外から窓越しに撮っていたり、それより前にも同じような構図で立ちバックを窓越しに撮っていたり、まあ確信犯でなければありえないわけで。同僚とはじめて食事をするレストラン、気まずい会話と、そこにちょこちょこ割って入るボーイのうざい感じをひたすら長回しで捉えたりするあたり、相当できる監督さんなのは間違いない(スティーブ・マックイーン!)。随所にけっこう凄い長回しが入ってきて、こんな映画なのになぜそんなことを……と驚愕する。クライマックスもえらい長回しで、延々やった後に見えてくるあの光景、というのもかなりいい出来ではあった。


深刻ぶっているが笑えるし、芸術映画っぽい撮り方や音楽でありながらめちゃくちゃ俗だったりもするし、しかしそのすべてを狙ってやっているようにも見えるという怪作。本来のお話を明らかに説明はせずに(といっても見ていれば自ずと明らかになるし、最後のほうにセリフでほのめかしはあるのだが)、裏に底流として流したまま進行していくのもいい。これ、ネタ的にあからさまにやるとかなり気持ち悪いだろうし。ひょっとしたらこの監督(スティーブ・マックイーン!)、凄いのかもしれない。次回作はブラピ主演・製作だとか。