ロンゲスト・ヤード


ロンゲスト・ヤード』(ロバート・アルドリッチ、1974年)@日比谷みゆき座。


アルドリッチをフィルムで!劇場で!というこの機会を逃す手はありません。駆けつけてください、行ける方。


べつに傑作!だ何だと言いつのるつもりは毛頭なく、ただぐだぐだしている男が何となくシトロエンで爆走して何となく逮捕されて収監され、何となく囚人フットボールチームを作ることになり、最後は看守チームを相手に一世一代の大勝負、という「ただの娯楽映画」の、その娯楽としての充実っぷりを堪能してしまえばそれでよし。「自己の尊厳を賭けた闘い」とアルドリッチ自身によって要約されるテーマの(ちなみに『ロンゲスト・ヤード』についてのインタビューで、「あのラストはロッセンの『ボディ・アンド・ソウル』からそのまま流用したものだ、原作にはない」と語っている)、その「自己の尊厳」は「キンタマ」という言葉として語られるが、それを捉えて「男性映画」なんてレッテルを貼るのはあまりにも勿体ない。アルドリッチの「キンタマ」は女性にもあるのだし、例えば『The Big Knife』のパランスにはその「キンタマ」が決して持てない。そうしたものとして「キンタマ」はある。


今回劇場で他のお客さんと一緒に見てみて、おそらくビデオやDVDで見ているときよりもコメディ要素の強い映画だと感じたのと、随所でその時々によって違う人物たちによって炸裂する「ガハハハハ!」という笑い声の異様さが印象に残った。その笑いは単純に楽しかったりもするし、「笑うか、笑わないか」でその場にいる人々の人間関係を一瞬にしてわからせる演出でもあったりする。刑務所長の取り巻きみたいな奴がうっかり笑ってしまったり。(『ロンゲスト・ヤード』の刑務所長エディ・アルバートの役は、ニクソンをモデルにしたらしい。だからお付きがテープレコーダーを回したりしているらしいが、公開時の批評で誰もそのことに触れてくれなかった、とアルドリッチ御大は拗ねていた。)


あの笑い方ができる人は現在ではドリュー・バリモア姐さんくらいしかすぐには思い浮かばないが(『ローラーガールズ・ダイアリー』にあふれる女性たちのガハハ笑い!)、そんなガハハ笑いはやはりスクリーンで、他のお客さんと一緒にガハガハ笑いながら見るほうが断然楽しい。これを逃すと映画館で見る機会もそうそうないと思いますので、ぜひ劇場に駆けつけてみてください。今週金曜(13日)まで、日比谷みゆき座。


ちなみに土曜(14日)からはアルドリッチとも深く縁のあるもう一人のロバート、ロバート・ロッセンによる『ハスラー』がかかります。


走れ!つぶせ!急所を狙え!