『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ

著者は1993年生まれ。『はちどり』キム・ボラ監督の次回作の原作も入ったSF短篇集。ほとんどの話でフォーカスが当たる人物は女性で、家族の話、孤独についての話、愛についての話、などが語られる。センチメンタルだけどそれぞれの物語の核にしっかりSF的な発想があって、見事に落としてくる。ゼメキス『コンタクト』や、センチメンタルサイドに振ったときのジェイムズ・ティプトリー・ジュニアなんかを思い出す。素晴らしかった。

著者によるあとがきの一節が印象的だったので転記しておく。

いつの日かわたしたちは、今とは異なる姿、異なる世界で生きることになるだろう。だがそれほど遠い未来にも、誰かは寂しく、孤独で、その手が誰かに届くことを渇望するだろう。どこでどの時代を生きようとも、お互いを理解しようとすることを諦めたくない。今後も小説を書きながら、その理解の断片を、ぶつかりあう存在たちが共に生きてゆく物語を見つけたいと思う。

青くて、強い。無駄がない。この人は書ける人だと思う。この小説集、人口が日本の約半分の韓国で17万部も売れたらしい。今後が楽しみな作家。


わたしたちが光の速さで進めないなら

わたしたちが光の速さで進めないなら