ビーチボーイズ


基本的には座って、時折手を振り踊りながら、すこし不安定な声で歌うブライアン。陽気に煽るマイク・ラブ。映像で映し出されるデニスとカール。そんなすべてを包み込んで、強靱なポップスが現れ、きらめきながら夏の夜空に消えてゆく。夢のように、それらは過ぎ去っていった。"Don't Worry Baby" ……大丈夫、きっとうまくいく。そんなことをあの人たちに言われたら、それは泣く。


70歳前後とは信じられない声と、ブライアンとマイク・ラブが同じステージに立っている幸せと、そんなあれやこれやがすべて音になって、輝いて……。そこに妥協はなかった。あれやこれやの歴史のある曲をあれこれ取り混ぜ、そのままやっていた。煌めく音の上でたっぷりサーフさせられて、これでこの夏、思い残すことはない。意味やら歴史やらを越えて、ただ立ち上がってくる音に身をまかせていたら、いつの間にか終わっていた。ポップスは人の作る魔法なんだということが、よくわかった。