白昼の女狩り


曽根中生の未公開=オクラ作品、『白昼の女狩り』をユーロスペース「生きつづけるロマンポルノ」特集にて。


ロマンもポルノもなく、遊戯的な風土のなかで、あるのはただからっからに乾いた暴力と虚ろな目。とにかくエグい作品で、とてもこれを傑作とは呼びたくないのだが、しかし……。ゴダール!なのは間違いないが、これを見るとゴダールが優しい人に見えてしまう。初期の黒沢清作品からうきうきするユートピア感を取り去ったようだ、とも言えるか。こんな映画は非情な人でなしにしか撮れない。曽根中生はおそろしい。この映画をオクラにした日活上層部の判断はまったく正しかった。ロマンポルノを見るのははじめて、の人と一緒に見たのだが、上映後、彼女は脅えていた……


ただ機能に沿って動くだけの自動人形のような人物たちが、女を犯し、乾いた銃声を立てて人を撃つ。なぎら健壱(!)が主役の一人で出てきてあれこれやってくれるのだが、途中から場内は誰も笑わなくなった。なぎらさんで笑えないほどの、乾ききった非情さと空々しさ。曽根中生といえば人非人、というのはこれまでそれなりにわかっていたつもりだったが……。ただ呆然とするしかなかった。


空々しく機械的に進行していく暴力が、いつしかスクリーンに留まらず、世界を覆い尽くしていく、いや既に世界はこういう場所だったのではないか、という気にもなってくる。どこでもない場所の話と見えたものが、どこででもありうるものとして見えてくる。いまこの瞬間もどこかでこんなことが行われているのではないか……そしてその進行を止める術は誰にもないのではないか……。そういえば見ている最中、そこはかとなくスピルバーグの『宇宙戦争』を思い起こしていた。「市井の人」が理不尽な暴力にただ黙って耐え、生きのびること。


決して傑作とは言わないし、この極限の心なさを前にして人に勧める気はまったくしないけれど、クライマックスのアクションシーン、その呆気なさにはただ戦慄するばかりだ。そして最後、女は……。あまりに陳腐であまりに美しいあのラストカットは、それでも見ようという物好きな貴方が自分の目で確かめてみてください。


補記

上映が始まっても場内BGMが消えない、というトラブルがあって、受付に言いにいって最初から上映をやり直してもらったのだけれど、上映をやり直すにあたってトラブルへの言及も詫びの一言もなかったのは不愉快だった。ユーロさん、しっかりやってください。