ロボット


渋谷TOEIにて噂の『ロボット・完全版』(タミル語ヴァージョン)。


スーパースターが博士役と博士の作ったロボットの二役で出てきて、元ミス・ユニヴァースの綺麗なおねーちゃんが出てきて、どこまでもお馬鹿な二人組の弟子がいて、悪い博士がいて悪いロボットがいて、たまにスーパースターとおねーちゃんが一曲フルコーラスで踊って歌うのがなぜか砂漠だったりマチュピチュだったり。バックにアルパカもいたり。映画ってそういうもんだろ?


という姿勢で作られたこの映画。いやこれぞ娯楽映画、というものを見せつけられて、いいなあインド、と素直に思った。「雑」という評価もあるようだけど、雑どころか、かなり上手かった。ロボットが恋に落ちる瞬間、半開きの口のみで表現するのもさることながら、それを見ている者と見ていない者を的確に配しているあたり、もちろんベタベタではあるけれど、かなり演出できる監督さんなんやろなあ。ここはぐっときた。お話が適当なのは、そういう映画だからだし、「カット割りが雑」とか言ってる人は、イマドキの「スピーディーでスタイリッシュなカット割り」=上手い、と勘違いしてるだけ。こういうまっとうな娯楽映画が「サブカル」として語られるのは、正直気持ち悪い。だからこっちが正統派なんだって。マキノを見よ。


どーんと「SUPERSTAR RAJINI」と出てくるメインクレジットにびびり、主演のラジニカーントは49年生まれらしいのだけど、60歳とは思えないキレで踊りまくってるのにびびり、ダンスシーン(というか完全にPVなのだけど)の贅沢さにびびる。一方で、あっさり博士のお父さんが殺されて何のフォローもなかったり、あからさまに人を殺す描写をしている、というのは、ハリウッドではないことだなあと、このあたりは異質な映画文化も感じた。何回か暴力シーンもあるのだけれど、かなり非情な表現になっているところもあった。このあたりもけっこう上手くてぞっとさせられるシーンもあったけれど、ハリウッドだとこういう娯楽大作ではあからさまな殺人は避けるはずなので、ちょっと違和感も覚えつつ、そもそもそのあたりのコードが違うんだろうなあ。


後半、ロボットが悪くなってからは(=竹内力モードに入ってからは)、頑張りポイントがCGのみになってしまったかのようでちょっと残念。まあこっち側の見疲れもあったかもしれないが、ターミネーターをもろパクりしたりもしつつ、ちょっと単調になったなあ。というわけで前半は完全なる娯楽映画、後半はトランスフォーマーをさらに大味にした感じ、といったテイストになっていて、ガラッと転調していくあたりもインド映画、なのかもしれない。


堂々たる娯楽のこの映画、見るなら完全版がいいと思いますので、二週間限定の完全版でやっているうちにぜひ。疲れもするけれど、間違いなく幸福な時間が味わえるはず。