砂漠

ときどき、無性にロッセンの映画が見たくなる。それは『リリス』であったり『コルドラへの道』であったりするのだが、『リリス』の病みきったファンタジーと同じく、『コルドラへの道』の複雑な鬱屈は胸を打つ。「勲章を貰う予定の兵士たちをコルドラまで、生かしたまま連れて行く」のが、かなり老いたゲーリー・クーパーの任務なのだが、クーパーはかつて戦場で、怯えて壕に逃げ込んだ(のだか何だったか)過去を持っている。そしてクーパーが護送する「勲章を貰う予定の兵士たち」がまた皆揃いも揃ってクソ野郎たちで……そこに荒んだリタ・ヘイワースが現れたりするものだから、白昼のしらじらとしたバッドトリップのような、誰もカタルシスなど感じないであろう、そんな映画なのだ。そういえばニコラス・レイ『にがい勝利』の砂漠もまた、しらじらとしていた。ここに『飛べ!フェニックス』の砂漠を加えて、砂漠オールナイトをやってみたい。明け方には誰の顔もひび割れてきているかもしれない。