原発導入のシナリオ


東京にいる。放射能を少しずつ、体内に取り込んでいる。


福島は既に福島ではない。フクシマになってしまった。故郷を失った人たちの悲しみがどれほどか、想像もつかない。


いま、ぜひ見ていただきたいドキュメンタリーがある。
『原発導入のシナリオ 〜冷戦下の対日原子力戦略〜』NHK・現代史スクープドキュメント 1994年放送)。

  • 原発導入にあたって、慢性的な電力不足に悩んでいた日本の産業界は、コストの面(水力・火力より安い)で賛成したこと


そういったことが、NHKならではの取材力を駆使して、クリアに語られている。骨のあるドキュメンタリー。


科学はいとも簡単に政治に利用される、ということがこれを見るとよくわかる。民放はスポンサーがいないと仕事できないのと同様、科学者も(国を含めた)スポンサーが研究費を出してくれないと研究できない。科学・技術・政治が「想定外」としたことが現実に起こり、そのツケが福島に回っている。現在、福島の原発放射能を浴びながら作業されている作業員の方々には、ほんとうに頭が下がる。


わたしとしては、以下のように考える。

  1. 日本全国の原発を即時停止して、今回の震災をふまえた、新たな安全基準で検査し、不適格なものは廃炉にする。
  2. 東京電力への融資額(二兆円規模!)を見ていると、「民間企業」としてやっていくのは限界ではないか。「民間企業」としての広告・宣伝は禁止する。今回のようなことがあったのに、広告・宣伝を継続するうえに電気料金を値上げするようなことがあれば、資本主義の論理から外れすぎだ。
  3. 下に引用した提言のように、一定枠を設けて、代替エネルギー開発を促進する。

しかし原発に関しては、それが安全か安全でないかという議論は一旦置くとして、例えば原発を止めたとしたらどうするか、というところから日本中の科学技術者と起業家と野心家が代替エネルギーで一儲けしようとしのぎを削る、という構図の方が資本主義的にも美しくシンプルで健康的な気がするのだが、いかがだろうか。

(映画評論家 樋口泰人さんによる boid日記11.03.24 我々は考える羊である


闇雲に「原発継続」を掲げる新聞や知事は、いったい何を考えているのだろうか。「原発は、現状のままではコスト的にも割りが合わない」ことが証明されたというのに。
妄信としか思えず、怒りを覚えている。