ゴーストライター/ザ・ウォード

 


じじいたちがとにかく清々しい。ロマン・ポランスキーゴーストライター』、ジョン・カーペンターザ・ウォード/監禁病棟』。


優柔不断かつ正直すぎるユアン・マクレガーが政治的な陰謀に巻き込まれていく『ゴーストライター』、どんよりと曇ったりときに激しく雨が降ったりする、いかにもイギリスっぽいミステリーな天気の中、いかにも型どおりにユアンは果てしなく巻き込まれていくのだが、大統領夫人やら大統領秘書が妙になまめかしいのは何なんだ。ロリコンが撮ってるのに。画もまたなまめかしくて、個人的には冒頭から降っていて、要所要所で降ってくる雨に感嘆。オチのキレと、でもお話的にはオチてんのかこれ?っていうあたりもいかにもイギリスっぽいが、監督はポーランド人。間(ま)の使い方や妙ななまめかしさは、ヒッチコックというよりは後期シャブロル風味。これがヒットしたというのは嬉しい。こういう大人の映画がもっともっとあっていい。


若い女が精神病棟に監禁されるところから始まる『ザ・ウォード』、まさか『エンジェル・ウォーズ』(ザック・スナイダー)じゃなかろうが、何となくエンジェル・ウォーズぽい雰囲気を危ぶみながら見ていくと、何のことはない、御大、やっぱり活劇がやりたいのだった。ザック・スナイダーと比べてゴメン。そうだよね、ビョークに合わせて踊ったりしないよね。(エンジェル・ウォーズの凄まじいまでのダサさは何だったのだろう?)主人公の女(アンバー・ハード)に物を持たせるとやっぱり強力なのだった。もうこの映画に関しては、アクションとオチの爽快さに尽きる。スッカスカな映画だしカーペンター御大にしては音楽がややウザいなと感じもしたのだけれど、後味のよさはさすが、締めのカーペンター。終盤になるともう、満員の場内が笑いに包まれていて。90分で締めてくる低予算・活劇魂は健在でした。こういう映画を歌舞伎町の映画館で見るのが映画の楽しみでもあったと思うのだけれど、コマ劇と新宿プラザの跡地は「TOHOシネマズ新宿」なるシネコンになるらしいし、シネコンはどこもかしこも、何であんなに使いづらい構造になってるのだろう。映画見てるときに大地震が来たらパニック間違いなしの構造になってるのは何なんだ。殺す気か。そんな一見クリーンで中身はクソなものたち(「消毒されたクソ」と呼びたい)に抗うためにも、ぜひカーペンターを。