民三/ベロッキオ

石田民三『花火の街』。
「好きな人に好きと正直に言わないのは卑怯じゃありませんの」と、自分が片恋する男に言う女。妻の昔の男に「妻子は俺が養う」と声高に宣言した直後に、「あいつと会っただろう」と妻を問い詰めてしまう男。じっと溜めに溜めた思いを、暴発という形でしか出せない女。人間は矛盾している。だから愛しい。


ベロッキオ『母の微笑』。
「聖女認定」というのがどこまで一般的なものなんだろう。わりと気軽に、ステータス向上のためにできるもんなのか?キリスト教が絡むと、そのへんのリアルの尺度がわからなくなる。やはり唐突な「叫び」には感動するのだった。「叫びとささやき」の作家、ベロッキオ。さる映画監督の言だが、誠に的確と思う。